バレンシアの下部組織で育ち、マンチェスター・シティに移籍という流れは昨シーズンいっぱいで退団(スペインのレアル・ソシエダに移籍)したダビド・シルバと共通する。新シーズンではシルバの21番を受け継ぐことになった。
フェラン・トーレスにとって、シルバは実際に憧れの存在だったといい、テクニカルなプレーのインスピレーションも受けていたようだ。もっともトーレスはウイングの選手としては大型でダイナミックな仕掛けを得意とする。ただ、単にサイズやスピードに恵まれた選手と異なるのは細かい足技をうまく織り混ぜてディフェンスを混乱に導けるところだ。
右サイドから足の裏や爪先のアウトサイドを使って相手の逆を取り、間合いを外して振り切る。スペインでも少なくなってきた純然たるウイングの香りを残しながら、基本的な戦術眼も身に付けている。
左サイドからのカットインを得意とするが、右サイドで起用されてもハイレベルなパフォーマンスで応えている。縦に切り裂くだけでなく、ゴール方向に仕掛けるなど、多彩なチャンスメークができるのだ。大胆さと繊細さを併せ持つサイドアタッカーはさらにゴールやアシストで違いをもたらし、チームのタイトル奪還に貢献できるか。(文/河治良幸)